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近作『ザ・タウン』でその図体から想像できないほどに、まさしく「映画」を撮り上げたベン・アフレックの、監督第一作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』を見た。

想像通り、圧倒的に素晴らしい映画で、『ザ・タウン』『ゴーン・ベイビー・ゴーン』の両方を見てしまった僕たちは、クリント・イーストウッドやトニー・スコットと並ぶ映画作家の誕生に立ち会えたことをただ喜ぶしかない。(『アルマゲドン』ではじめて彼の姿を目にした僕たちの一体誰がこのような事態を想像しただろうか!)

冒頭、最小限に留められた音/セリフ、街の人々の表情/視線、たった数分間で映画は異様な緊張感に包まれる。(映像はまるでトニー・スコットの『アンストッパブル』『デジャヴ』を彷彿とさせるかっこよさだ)何かとんでもない事件が始まることをまるで、セリフもなしで、音声と表情だけで撮り上げてしまうベン・アフレックの才能に感嘆するばかりだ。

あえてこの場では、物語には触れずにおこう(デニス・ルヘインの探偵シリーズ『愛しき者はすべて去りゆく』を原作とした脚本が面白くないわけがない。ぼくは『闇よ、我が手を取りたまえ』しか読んだことないけど。。)映画作家ベン・アフレックが作り込んだ画面は、2時間もの間そのほとんどが、短いクローズアップ/クローズアップの切り返し/会話する2人のバストショット・背中のショット(まさに演出!!)の3つしかほとんど存在しない。その3つの構図だけで作り上げた、かつて見たことも無いほどの「視線劇」なのである。

この映画に内包する、数多くの重厚なテーマを、すべて登場人物による「視線」だけで撮りつくすベン・アフレックの才能をただうらやむばかりである。ただ相手に対して真っ直ぐに視線を向けるのはケイシー・アフレック/ミシェル・モナハンだけで、当然、「重大な嘘」を抱えているエド・ハリスや、アマンダの叔父の視線は真っ直ぐには向けられない。終盤バーの場面、「重大な嘘」をなおもつき続けようとする、アマンダの叔父の視線は大きく揺らぐ、ミシェル・モナハンは叫ぶだろう「ルック・アット・ミー!」と。ラストシーン、2人の意見が食い違い、ミシェル・モナハンが視線を外すとき、それは2人の永遠の別れを意味するだろう。

いづれアメリカ映画を代表することになるだろう、新たな映画作家の第一作を絶対に見逃してはならない。

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愛しき者はすべて去りゆく (角川文庫)

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