田中大地のwebサイト

ようやく、ようやくネットが復活した。月々若干のお金をケチったばかりに、ネットが繋がらない日々を過ごしており、ブログの更新もできずにいた。前回更新がどうやら1月のようなので、約3か月ぶりとなる。あのときは雪もふっていたが、今では大岡川に満開に咲いた桜すら散ってしまった。ブログを更新しない、即ち、映画や音楽に触れる頻度は多くなるということ。というわけで、4月の日記でも書いてみよう。

最近は、とある事情により時間をもてあます日々を送っている。(そのあたりはまた5月入るころに詳細を書こうかと。)毎日忙しい現代人の方々からしたら羨ましくて仕方ない、もはや刺殺されかれない日々を謳歌している。やはり時間があれば、と映画を観るわけで、4月1日ファーストデイは平日とか関係なく『愛、アムール』(ミヒャエル・ハネケ)、『ザ・マスター』(ポール・トーマス・アンダーソン)を観る。

最近映画を観ようとするたびに不安に襲われる。「自分が不感症になってしまったらどうしようか」、という不安である。どんな映画もかつてのように愛せず、かつては大いに涙し、心を震わせただろう瞬間でさえも、平然と、ドントムーブ、私。みたいになったらどうしていこう、と。僕が生きた二十数年のうち、少なくとも15年の間は映画を信頼し、映画に身を捧げ、映画に寄って生きてきたようなところがあるので、自分が不感症になった瞬間、はて私は、となってしまうだろう。全く脆い。いくつか兆候はあって、今朝家で観た『遠雷』(根岸吉太郎)とかもう全然感動を覚えない。最後に歌うとこと石田えりの乳房くらい以外に、少しも心動くことなく138分は過ぎ去った。エンドロールが流れ、はっと気付く。私は、この2時間強、なにを観ていたのだ、と。苦痛とはこういうことだ。珈琲はすっかり冷めてしまった。

だから最近の映画鑑賞のスタイルとは、私にとって何よりも恐怖の、自分はまだ映画で感動できる、ということを確かめるために観るようなところがあるのだ。実際にこの4月は、いくつもの素晴らしい映画たちと出会うことができ、私はまだ生きている。ここにいる。かつてほど、涙を流すことはなくなった。私は渇いていく。

また何を言っているかわからなくなった。
ファーストデイの話に戻ろう。ミヒャエル・ハネケもポール・トーマス・アンダーソンも私の人生にとってはわりかし、どうでもいい人たちで、ハネケとか嫌いな監督3人挙げてと聞かれれば、いの一番に挙げたい監督であるし、次はトリアーで、アロノフスキーと並ぶだろう。さらにデヴィッド・クローネンバーグもすごく嫌いだ(今週公開の『コズモポリス』は楽しみだ。ビジュアルが『ゴシップガール』ぽくてすき)。ポール・トーマス・アンダーソンは全然嫌いじゃないけど、『ブギーナイツ』よかったよね、確かというくらいで思い入れはない。大体長い映画が多すぎる!映画のためにならない。映画を撮る方々は、人に観てもらうために、大切な時間の一部を頂戴していることにもっと意識的でなければならない。長い映画が許されるのはハリウッドであり、長い映画を撮りたいならハリウッドで撮れるくらいの人材になってもらいたい。

『愛、アムール』は、ハネケという存在は、やはり僕の人生にとって無縁であり続けることを決定的にした作品であり、特に何ら心動かされなかった。おばあちゃんがロボットみたいに突然動きが止まるので、笑ってしまったくらいだ。パルムドールとか取る、こういう作品で心が動かされないと、ああ、私はやはり不感症になってしまったのかと、びくびくする。

だから次に観た『ザ・マスター』が本当に素晴らしくて、私は生を実感する。冒頭の海、青、そしてホアキン・フェニックスの顔がドンと据えられたショットでぶわっと、涙で頬がべちょべちょになる。「おかえり、おかえりホアキン」、私は心の中でつぶやく。同じ現象は数日後『ホーリー・モーターズ』を観たときにも起こったことは言うまでも無い。「おかえり、おかえりカラックス」。

『ウォーク・ザ・ライン/君に続く道』『アンダーカヴァー』『トゥー・ラバーズ』僕の大切な映画にはいつも彼がいた。言いすぎだ。しかし、あのホアキンのバチっと固められた髪型、額、そして今にも人を殺しかねん目つき、あるいは不気味さ、がスクリーンに映る、にじむだけで私は幸せで昇天しそうになる。そのホアキン演ずるフレディの居場所として全く相応しくないデパートのシーンのあまりの素晴らしさはどうだろうか。「4999ドル」と当時の人々にとっては圧倒的に破格だろう毛皮のコートを売り歩く女性を追うキャメラの滑らかな動き。ジャケットとタイでぴしっと決めたホアキンがキャメラを携える佇まい。客にふっかける喧嘩。映画は冒頭から一瞬も揺るがずに、疾走する。

ここまで書いてみて、お腹がすいてきた。近くの『YOHO』というお店がとても美味しいとOZマガジンに書かれていたので、ワインでも飲みにいこう。そう決めた僕はこの日の日記のタイトルを「4月、映画」から、「4月1日、映画、ホアキン」に修正・変更することで、何かを成し遂げた気になる。僕の人生はこうせこたらしい調整、調整を重ねることで何かを言い訳し、取り繕うことを繰り返している。だからといって、特に気にしていない。僕の人生にとってそれは大して大事なことではないのだ。簡単に取り繕えることならば取り繕えばいい。僕にはもっと大事なことがあるのだ。オーディオからはEVISBEATS feat 田我流の『ゆれる』が流れてきた。身体が酒を欲している。

『ザ・マスター』最高です。

ウォーク・ザ・ライン/君につづく道 DVD
アンダーカヴァー DVD

“4月1日、映画、ホアキン” への1件のフィードバック

  1. 田中 大地 より:

    ネットが復活したので久々にブログを更新しました。僕の愛するホアキン・フェニックスと僕の嫌いなミヒャエル・ハネケについて、薄い描写でだらだらと雑文をお届けします。
    /4月1日、映画、ホアキン
    http://t.co/hB27GmsXGY

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